少し前の
Casa BRUTUSが器の特集をしていて、多治見の美術館やギャラリーが紹介されていました。その記事に魅せられて、週末は多治見へ。暖かい日差しの下、折り畳み自転車のペダルを踏みながら、陶磁器の美術館やギャラリーめぐりをしてきました。
11:00 JR多治見駅 → 11:05 陶林春窯
◆陶林春窯
最初に訪れたのは、多治見駅の北側の住宅街にひっそりと佇む『
陶林春窯』です。美しい日本家屋に、美濃の若手の陶芸作家の作品を展示した素敵なギャラリー。「こんにちは」と暖簾をくぐると、奥から男性が出てきて、「
作品は、是非、手に取ってご覧になって下さいね」と声をかけて下さいます。
ギャラリー探訪初心者の私にとっては、ちょっとびっくりなお言葉でしたが、多治見のギャラリーでは、有名な作家さんの作品を展示している店も含めて、行く先々で、同じような言葉をかけられました。
案内に従って入口で靴を脱いでお座敷に上がり、1部屋ごとに品良く展示してある作品を、ゆっくり、見て、触れて、鑑賞。扱う作品の多くは、食卓で使う日常使いの器で、お値段も手が届く範囲のものが中心。日頃の食卓のヒントになる粋で温かみのある器ばかりで、選んだ人のセンスを感じます。
渡り廊下から奥の部屋に進むと、カフェスペースを備えた展示室が4つあり、手入れされた中庭を眺めながら、作家モノの器でお茶を飲むこともできます。建物の2階にも展示室があり、細い階段を上がっていくと、格子窓から入る柔らかな日差しの中、モダンで、個性的な器たちが並んでいました。お部屋ごとに、光の入り具合、雰囲気、展示作品が異なり、器も、建物も楽しめる素敵なギャラリーでした。
11:30 陶林春窯業 → 11:35 オリベストリート
続いて、向ったのが多治見駅南に、陶磁器商家の古い街並みを残す
本町オリベストリートへ。土岐川にかかる多治見橋を南に渡るとお洒落なギャラリーやカフェが並んだ通りが見えてきます。
◆井筒
たじみ創造館の1階にある陶器屋さん。作家ものの茶碗やぐい呑みを揃えていて、見ているだけで楽しい。創造館には、他にも陶器屋さんや、展示室があって、そこで見つけた藍色志野の徳利と猪口。なんともいえない青と白の色合いとシャープな佇まいは、一度見たら忘れられない個性の強さがあります。作り手は、酒井博司さん。志野にも色々あるんですね。すっかり魅了されました。
◆万年青
『万年青(おもと)』は、オリベストリートから1本入った細い通りにある古い蔵を改造した陶器屋さん。建物の入口前には、普段使いの陶器が、たくさん並んでいます1階は、喫茶スペースを併設していて、2階は企画展などを行うギャラリーになっています。お昼は、こちらで日替わりランチ(¥850)をいただくことにしました。この日のランチは、グリンピースご飯、そば、サーモンフライ、お漬物、汁粉、コーヒーという内容。ギャラリーだけあって器使いが面白く、同じランチを頼んでもそれぞれ違った器に盛り付けて出してくれます。食後のコーヒーもタイミングを見計らってサイフォンで淹れてくれたもの。平日の午後の静かな時間にゆったり味わいたい感じでした。
13:00 オリベストリート → 13:30 岐阜県陶磁資料館
オリベストリートから、岐阜県陶磁資料館までの道は、なだらかな坂道がゆるやかに続き、その傾斜は徐々に強くなり、最後の最後は、急な上り坂が待っている・・・という自転車ライダー泣かせのコース。最後は息も切れ切れに。なかなかいい運動になります。
◆岐阜県陶磁資料館
岐阜県陶磁資料館は、美濃焼きの歴史を紹介する資料館。回廊式の5つの展示室では、瀬戸黒・黄瀬戸・志野・織部などの桃山陶を中心に、平安時代に作られた白瓷(しらし)の茶碗から、現代作家の代表的な作品までを紹介しています。美濃焼きと聞いてもピンとこなかったのですが、瀬戸、織部、志野など、この地方で生産される陶磁器の総称だったんですね。建物は滋味ですが見応えアリ。
15:00 岐阜県陶磁器資料館 → 15:15 セラミックパークMINO
本当は、ここから、
ぎゃらりーももぐさへ向う予定だったのですが、坂道に恐れをなし、1キロ程先の、岐阜県現代陶芸美術館を目指すことにしたのですが、気持ち良く坂道を降りたあとは、またひたすら上り坂(涙)
◆岐阜県現代陶芸美術館
現代陶芸美術館は
セラミックパークMINOにあります。案内に従って、長い長いエントランスを進むと、広大な敷地に、笑えるほどスケールのドデカイ施設が現われます。
地上3階、地下1階の建物には、ホール、Shop、美術館、レストラン(これがまた広い)を備え、2階の離れには茶室があり、その前の人工池にはお能の舞台があり、池の水は地下1階まで続く人工滝として流れ・・。という光景を3階入口横のテラスから望めます。なんで、こんなところにこんなものを作っちゃったんでしょうねぇ(^^ゞ なかなかのインパクト。いやぁ、自転車で頑張ってきた甲斐がありました。
現代美術館のミュージアムショップでは、
森正洋の平形めし茶碗の品揃えが充実していて、そのモダンなデザインにすっかり魅せられた私。見ていたら欲しくなり、腰を据えてどれがいいか品定め。今回の小旅行では、気の利いた茶碗を見つけよう・・・とは思っていたのですが、美濃焼きとは全然違う
茶碗を買うことになってしまいました(^^ゞ でも、ここに来ないと多分出会えなかったお茶碗だから・・・いいよね。
16:15 セラミックパークMINO → 16:30 オリベストリート
多治見駅方面への戻り道は、ひたすら阪の下り。ラクラクです(^^)
◆美濃陶芸協会ギャラリー
オリベストリートに戻ってきて、ふと目に止まったのが「酒井博司
作品展」の文字。今回何箇所で目にした藍色志野の作家の作品展とあれば、是非とも見てみたい・・と自転車を止め、
美濃陶芸協会ギャラリーを訪ねました。会場には、酒井さん本人もいらして、ギャラリーの人に紹介されます。「質問があったら何でも聞いて下さいね」「是非、手に取って見て下さいね」の言葉に甘えて、色のこと、デザインのこと、焼き方のこと、色々と質問させていただきました。酒井さんの藍色志野の真髄といいますか、良さがわかるのは、ある程度大きさのある器。存在感あります。目の保養&お勉強になりました。
後は、気になるお店やギャラリーをサクっと見学。
◆織部 うつわ邸
織部 うつわ邸は、作家の1点ものから、気軽につかえる洋食器まで揃うギャラリーも備えた陶磁器屋さん。奥の茶室では抹茶もいただけるよう。
◆花御堂
日常使いの陶磁器を展示販売しています。館内には蔵を改築した「ギャラリーやまぼうし」があります。
17:00 オリベストリート → 17:10 JR多治見駅
瀬戸には何度か足を運んだことがあるけれど、多治見を訪れたのは今回が初めて。こんな近くにこんなに楽しい場所があったのに何で気が着かなかったのでしょう。特に印象的だったのは、
陶林春窯。陶磁器のギャラリーというと敷居が高そうなイメージがあったのですが、一旅行客も暖かく迎え入れてくれるホスピタリティーに感激しました。多治見には、
市之倉さかづき美術館、
幸兵衛窯、
ぎゃらりーももぐさ等々、まだまだ気になるギャラリーや美術館があるので、近いうちに再訪したいと思います。出来れば、自転車に乗るのが心地良い季節のうちに。