チーズにも旬があります。冬から春にかけての今の季節に美味しいのが「羊乳のチーズ」です。羊の出産シーズンは冬。赤ちゃんを育てるためのミルクの一部がチーズとなって市場に出回り始めるのが、ちょうど今の時期くらいから。春にかけてどんどん美味しくなるので、ヨーロッパでは、羊乳チーズは、春の風物詩の1つなのだとか。名古屋のチーズショップでも、羊乳チーズの品揃えが豊富になりました。
本日のチーズのプラトーも、羊乳のものばかりで作ってみました。
ペライユ・・羊の飼育がさかんな南仏のルエルグ地方のチーズ。青カビチーズで有名なロックフォール村も近くなのだとか。表皮は淡いアイボリーで、とても柔らかいのが特徴。ナイフを入れると中はトロットロ。羊乳特有の濃厚なミルクの香りと甘味が口一杯に広がります。熟成が進むと羊特有の「獣臭さ」が際立ってくるのが素敵。
コルシカ・・・その名の通りコルシカ島産。島の名前がそのままチーズの名前になっています。羊らしい真っ白な白カビ。もっちりとした食感で、舌触りはねっとり。羊乳らしい甘い香りと濃厚なミルクの美味しさがストレートに味わえる食べやすいチーズです。ミルクにはほんのりと草の香りが。素朴で田舎っぽさが魅力のチーズ。
ブル・ディ・カプラ・・ピエモンテ地方の青カビチーズ。決して熟成が進んでいるものではなかったけれど、うっとりするくらい見事な美しさの青カビ。ピリリとしっかりとした辛さがあります。チーズもクリーミーすぎず味に凝縮感があり、久々に美味しい青カビをいただきました。干し葡萄や柑橘系の蜂蜜を添えて食べても美味しい。
ペコリーノ・ディ・フォッサ・・・マルケ州のソリアーノ・アル・ルビコーネという小さな田舎町のハードチーズ。熟成したペコリーノ・トスカーノを土の中に埋めてさらに熟成させたものなのだとか。この手法は、もともとは、略奪から守るために、チーズを布袋で包んで地下に掘った穴の中に保管したのが始まりのようで、土に埋めたチーズが美味しく変化していたことから、チーズの熟成の伝統的な手法として今に伝わるようです。
香りも、食感もペコリーノそのものなんですが、味の方は、なんと言ったらいいのかな。土の味がします。大地の草を食べた羊の乳で作ったミルクがそのまま大地に帰っていくような味。古いビンテージのワインを満を持して開けてみたら、香りはうっとりするぐらい素晴らしかったけど、味は、土と水の味に戻っていた・・・・そんなことってありませんか?その時の味に似ています。もうちょっと早く出会えてたら、きっともっともっと素晴らしかっただろうに・・・。その片鱗を充分に感じさせてくれるチーズでした。
一口に羊のチーズといっても、産地や製法は異なり、味わいもタイプも違うものが沢山あるんですね。こうやってまとめて比較して食べるととっても面白いです。羊のチーズはこれからが旬。チーズ選びの楽しさが、また1つ増えました。