11月26日(土) つづき
蝦夷鹿猟は10月25日が解禁。猟が続く2月頃までの期間中、北海道では焼き肉店からフランス料理まで、蝦夷鹿メニューが登場します。せっかくなら、フレンチでいただきたい。釧路は、蝦夷鹿の産地「白糠」の近くなので、「きっとジビエが得意なフレンチレストランがあるはず!」と信念を持って探したところ、1軒の素敵なレストランを見つけることができました。
「
Gustora」は、フランス南西部のバスク地方で修行を積まれた安藤シェフが、釧路市内の柳町公園の近くで営むレストラン。お店の名前の「Gustora(ガストーラ)」は、バスク語で「喜びに満ちて」という意味。この日の晩は、その名にふさわしい喜びと満足感に溢れる時間を過ごすことができました。
雰囲気のある白い建物のドアを開くと、目の前がオープンキッチン。左手奥がテーブル席になっています。白壁にはMENUを書いた黒板にステンドグラス。どっしりとしたテーブルが数卓ゆったり配され、温かみのある作りになっています。
夜のメニューは アミューズブッシュ+前菜一品+主菜一品+デザート+自家製パン+Cafeのプリフィックスタイプ(¥3675)で、前菜と主菜は、黒板に書いてある本日のメニューの中から好みのものを選ぶことができます。
この日のMENUを見せてもらってびっくり。お店には、予約時を含め、電話やメールで何度かこちらの希望を伝えてあったのですが、その日のメニューには、私たちのリクエストした全ての要素が盛り込まれてあったのです。リクエストの内容は、ジビエが食べたいこと、特に蝦夷鹿料理を希望していること、ジビエの用意が難しい場合は内臓系を使った料理が食べたいこと。…我侭ですよね。最大限応えて下さったお店の心意気に感激しました。
この日のオーダーは
*シェリー
*茶路めん羊牧場 仔羊のレバーのソテー
*茶路めん羊牧場 仔羊のトリップの煮込み
*えぞ鹿のポワレ ソース ポワブラード
*デザート
*ABOTIA 2001
*エスプレッソ
●ABOTIA 2001
ワインは、バスク地方で作られているワインがあると伺い、これをいただくことにしました。安藤シェフが修行中から惚れ込んだという
ABOTIAは、タナ、カベルネソーヴィニヨン、カベルネフランで作られており、色は濃く、果実実がしっかりしたシャープでスパイシーな味わいのワイン。レバーのお料理や鹿料理との相性も◎でした。
●アミューズ
食事の前に、サラミ・ラディッシュ・キュウリにスパイシーなマヨネーズを添えたものが出されました。食前酒にいただいたシェリーとサラミの脂が舌の上で溶け合う感じがなかなか素敵。これからのお食事への期待が膨れ上がります。
続けて、牡蠣の天ぷらのような揚げ物をトッピングしたカブのポタージュが出てきました。カブの自然な甘みを生かしたポタージュは優しい味わい。揚げたての牡蠣はあっつ熱でプリプリ。コクがあって旨味のある牡蠣はポタージュと一緒にいただくと美味しいです。
●茶路めん羊牧場 仔羊のレバーのソテー
目の前にお皿が置かれた瞬間、思わず「わぁ~」と声を上げそうになりました。5cmはあろう厚さにカットした仔羊のレバーのソテーがマッシュポテトに盛られ、ハーブ野菜のサラダが添えてあります。ボリュームたっぷり。焼加減は素晴らしく、ローズから鮮やかな赤色へのグラデーション。肉汁を湛えたレバーは柔らかく、噛み締める毎に滋味深い美味しさがじんわり、口の中に広がっていきます。この厚さだからこそ、レバーの美味しさがじっくり味わえるのでしょうね。
「ロニョン(腎臓)もあるんですけど、お付けしましょうか?」というシェフの一声に飛びついてお願いした、ロニョンは、しっかり塩コショウしてスパイシーに仕上げてあります。きょうのワインにとても良く合います。嬉しい(^^)
●茶路めん羊牧場 仔羊のトリップの煮込
こちらは相棒のチョイス。トマト味の羊のトリップ(胃袋)の煮込み料理です。小さくカットした羊のトリップは、じんわり「羊」を主張。牛よりもトリップ自身の味がしっかりとしていて、ねっとりとした旨味があったとのこと。とろけるような優しい味に仕上げてあったそうです。盛付けもお洒落。
メインのお料理に移る前に シェフが鹿肉の塊をお皿に盛って見せに来てくれました。骨付きの大きな塊が2個。「どのくらい食べられますか?」と聞かれて「全部は ちょっと無理かも・・・」と答えて笑われてしまった私。・・・普通は1個で3人前くらいなんでしょう(^^ゞ 食いしん坊なことを露呈することになってしまいました。
●蝦夷鹿のポワレ ソース ポワブラード
ロゼ色に焼き上げた鹿肉に骨周りの部分と野菜と洋梨のコンポートが添えてあります。見た目もボリュームもゴージャスな一皿。お肉は火入れ加減が絶妙で、美しいロゼ色。肉汁を湛えていて、ほんのりと血の味がします。力強い・・・というより、むしろエレガントな味わい。ソースは、鹿の骨からとった出汁をベースに黒胡椒を効かせたポワブラード・ソース。スパイシーな感じがワインと良く合います。爽やかな酸味と柔らかな果実味を生かした洋梨と一緒にいただくと肉の旨味が引き立ち、口福感が広がります。骨付き部分のお肉は、手づかみで。締りのある肉の旨味を堪能。くまなく残さず食べつくしました。満足。
蝦夷鹿は、ジビエの中では臭みが少なく、鉄分の風味が穏やか。シェフのお話を伺って、狩猟の仕方にも違いがあることがわかりました。鹿肉は狩猟の仕方で味や肉質が変わるそうで、この界隈では、頭を打ち抜いて「即死」させ、その場で「血抜き」をして「冷蔵処理」して運ぶなど、猟師の皆さんが臭みを残さない処理を徹底しているのだそうです。
●チーズ
チーズ専用のメニューの中から、バスク地方のチーズを2種。
イベリコ・・・山羊・羊・牛の混乳のセミハード。香りは山羊。山羊ですねぇ。食べるとミルクの甘みがフワっと広がり、羊さんを感じます。喉元を通り過ぎた後、熟成したシェーブルの余韻が口の中に残ります。私好みの味。
オッソイラティー・・・羊のミルクを使ったセミハード。
●デザート
真っ白なフラマンジュに柿をビネガーでマリネしたもの、イチゴを添えて、砂糖細工で仕上げてあります。甘さと酸味のコントラストが面白く、見た目も華やかなデザートです。最後の最後まで、ワクワクするような美しいお皿が用意され、少しの手抜きもないのが素晴らしい。
どのお料理も、素材の魅力を引き出した味わい深いお料理で、彩りが美しく、一皿のポーションもしっかりしているのが嬉しい。目でも舌でも「食べたぞー」という充実感がありました。美味しいものをたくさん食べて幸せになりたい時に行きたくなるレストランです。
お料理の素晴らしさは勿論ですが、MENUの説明だけではなく、食事中に何度もテーブル席を覗いては、客の様子に気を配るシェフの心遣いが店全体に行き渡り、とても心地良い雰囲気の中、お食事を楽しむことができました。ついつい長居をしてしまったのに、食後にマールまでサービスしていただいて、本当に申し訳ないくらい。
お料理の美味しさ、サービス、店の雰囲気どれも素晴らしく、そのコストパフォーマンスの高さは驚愕もの。こちらでお食事をするだけのために、また釧路へ来たい・・そう思わせるお店でした。次に北海道へ来る時は、旅程のどこかに「釧路泊まり」を組み込むことは、2人の中で確定事項となりました。半年後になるのか、1年後になるのかわかりませんが、まずはこちらへの予約ありき・・・で北海道旅行のスケジュールを決めることになりそうです。
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●GustoraHP(フレンチレストラン)
住 所:釧路市中園町2-8
電 話:0154-31-3635
備 考:要予約
お店のロゴはバスク文字を使用。味があります。
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1年後に再訪した時のレビューは、
こちらからどうぞ。