休日の午後、蕎麦屋で一献とあいなりました。訪れたのは、蕎麦懐石の店「夢玄」です。場所は、国道41号の平田町の交差点の北西側。一方通行の道路が入り組んだ裏通りのマンションの1階にあります。打ちっぱなしのコンクリートの壁に、風情ある布の暖簾に達筆で「夢玄」とあるだけ。注意していないと見落としてしまいそうなお店です。店内は、打ちっぱなしのコンクリートに竹や石を施した空間に、黒のインテリアを配した、モダンな中に和のテイストを生かした造りになっています。落とした照明が落ち着いた雰囲気を醸し出し、ゆるりと盃を傾けようではないか・・・という気分にさせてくれます。
お食事は、昼も夜もコース仕立てになっています。私たちは、料理3品+蕎麦という1575円のコースをいただくことにしました。料理はおまかせですが、蕎麦は、せいろ、かけ、蕎麦がきの中から選ぶスタイル。気になるお飲み物は、日本酒が、冷酒2種、燗酒1種、焼酎は、芋、米、蕎麦がそれぞれ1種類ずつ。この日は冷酒用に綿屋と久保田、燗酒用に月不見の池というラインナップでした。選択肢は限られていますが、料理の邪魔をしないお酒が用意されているよう。月不見の池の燗でほんのりしながら、料理が来るのを待ちます。
(・・・燗温が熱めなので、ぬるめがお好みの方は、オーダー時にリクエストを忘れずに・・・)
●胡麻豆腐の大根餡がけ
胡麻豆腐に鰹出汁でじっくり煮込んだ大根の餡仕立てを乗せて蒸してあります。熱々のところをふぅふぅしながらいただきます。温めることで胡麻豆腐の香りとネットリとしたうまみが引き立ち、鰹出汁の効いた少し甘めの餡との相性も抜群。
●3種盛り 陶器の台に小さな猪口を並べて
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キノコとかぼちゃの冷製仕立て
キノコの風味豊かな一品。かぼちゃの仄かな甘みがいい感じ。
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茄子と貝柱の煮浸し
ごくありふれた煮浸しなんですが、どうしてこんなに美味しいの?油の馴染み加減と貝柱のお出汁の染み具合がいいからなのかな。見習いたい。
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鯛昆布じめと鯛味噌とたたきオクラのミニ鮨
旨みがギュッと凝縮された鯛の刺身、ねっとりとしたオクラ、パラリと炊いた酢飯のバランスが良く、日本酒が進みます。
●冬瓜入りのさつまいものスープ
さつまいもの自然な甘さを生かしたポタージュ、別立てで鰹出汁で味を含ませたと思われる冬瓜がいいお味。
●せいろ蕎麦
漆の器に入った冷たい蕎麦つゆを、好みに応じて蕎麦猪口に入れ、薬味(おろし大根、山葵、刻み葱)を添えていただきます。蕎麦は、瑞々しい細切り。時期的な問題なのか、蕎麦の香りはあまりしませんが、味は濃く、噛むと蕎麦の甘みがしっかりと。程よいコシがあり、喉越しもいい。鰹出汁の効いた、少し甘めの蕎麦つゆに良く合います。蕎麦湯は、別仕立てのポタージュタイプ。お蕎麦を食べ終わる頃を見計らって、熱々のものが出てきます。蕎麦の甘い香りを堪能。
どの料理も丁寧に作られていて、素材や出汁の旨みを生かした、少し甘めの薄味の仕上がり。昼の料理は、蕎麦を待つ間に、日本酒を呑みながらちょいといただくには、程良い分量。おまかせのコースのみですが、ここのご主人が作るものなら、何が出てきても楽しめそう、そんな印象を持ちました。厨房1人で切り盛りしているのに、こちらのペースを見計らって、料理をタイミング良く仕上げて出してくれる配慮も嬉しい。おまかせにすることで、このクオリティーとCPが保たれているのでしょう。夜も訪ねてみたくなりました。
この店のもう1つの魅力が、器。錫の箸置、酒器、猪口、漆の器、どれもセンスが良い。前菜3種盛に使っていた陶器の台が気になって、帰り際にご主人にお尋ねしたら、今をときめく陶芸家・内田鋼一の「加彩台器」とのこと。内田氏は、個展を開くと前夜から徹夜で並ぶファンがいて、初日の数時間で全作品が完売してしまう程の人気だそうで、同じようなものを手に入れるのは、難しいのではないか・・・と丁寧に教えて下さいました。ランチの器にさりげなく使うところが素敵です。店の入り口には、錫や塗り物の作家の個展の案内もあって、「錫と漆の器 青木聖・福田敏雄 二人展」が、鶴舞の手児奈というギャラリーで開催中ということもわかりました。面白そう。楽しみがまた1つ増えた、休日の午後でした。
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●夢玄 (蕎麦懐石)
住 所:名古屋市東区橦木町3-54 ステージ橦木1F
電 話:052-937-7398
場 所:平田町の交差点から1本北を西へ入ったマンションの1階
備 考:予約が望ましい
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