日本酒の「
隆」のことを調べている時に、長野県佐久市でどぶろくを作っている蔵元があることを知りました。毎年春分の日に蔵開きをして、どぶろくの試飲販売をしている・・な~んてことがわかったら、もう行くしかないですね。
訪れたのは、旧中山道茂田井間の造り酒屋
武重本家酒造です。JR「佐久平」駅から
千曲バスで35分(片道大人730円)、「茂田井」で下車してすぐの場所にあります。受付で試飲用のお猪口をもらい、酒蔵内を見学したら、お楽しみの試飲タイムに突入。
●十二六(どぶろく)
まずは、お目当ての十二六(どぶろく)から。どぶろくは、よくすりつぶした米、米麹、水だけで作った素朴なお酒。瓶の中でも発酵し続けている「生」ならではの変化を飲み比べられるよう、出来たてのもの、2週間経過したもの、2ヶ月経過したものが用意してありました。
3/21完成・・甘酸っぱい~。米の旨みたっぷりのとろりとした甘さに、充分な酸味が加わり、舌の上で弾ける炭酸の泡のシュワシュワ感がなんともいえないハーモニーを奏でてます。ベタっと甘いと思いきや、意外と味はデリケート。米の形がそのまま残っているので舌触りは粒々してます。
2週間経過・・酸味が出てきて、日本酒に一歩近づいた感じ。広がりのある甘さと酸味のバランスが良く、舌をくすぐる微炭酸も心地良い。私はこのぐらいのものが好みかな。
2ヶ月経過・・酸がしっかりしてきます。甘さより旨みが出てきて、日本酒にさらに近づいてきた感じ。相棒君はこちらが好み。しょっぱなからスイスイと3杯美味しくいただきました。
温度が上がると炭酸が爆発するので、持ち帰りは難しいかなと思ったのですが、キャップに穴のあいた大きなペットボトルに入ったものなら、傾けずに揺らさないように注意すれば大丈夫そうだったので、即、購入。
●試飲
屋内の試飲場では、代表銘柄の「御園竹」「牧水」などの日本酒や、十二六の焼酎、限定販売の古酒等々20数銘柄がずらり。新酒の瓶出ししたばかりのもの(速醸)も、小さな甕で出してあり、こちらはアルコール度数が高く、味の違いがわかりやすい。飲んだ中で「御園竹 濃醇旨口山廃原酒」も良かったけど、一番気に入ったのは「牧水 きもと純米」。燗酒でもいい感じ。燗温は、35度。これ以上はNG。トロ火でゆるりと温めるがポイントだそうです。このゆるゆる感、たまりませんね。ハイ、こちらもお買い上げ。
●きき酒
今年の花見酒はどのタンクのものか探したり、タンク毎の微妙な違いを比べてみたり・・・。
花見酒はその年の新酒から1本のタンクのみを選んで瓶詰めするのだそうです。旨み・甘み・酸味のバランスがよく、春らしいものはどちらか・・・迷いました。
同じ大吟醸でも、味は重めで香りがない15号、香りは良いけれど味に厚みがない16号。ブレンドすると(勝手にお猪口で混ぜました)香りがふわっと広がり、甘さと旨味のあるお酒に。なかなか面白いです。
●お酒以外のお楽しみ
仕込み水・・柔らかい口当たり。飲んだり、容器でお持ち帰り自由。
野沢菜漬・・小鉢に沢山用意された少し飴色がかった漬物が美味。お酒が進みます。
酒粕ゼリー・・濁り酒をそのまま固形にしたような甘さ控えめの大人の味。酒のアテにも。
酒粕羊羹・・抹茶味と漉し餡。言われなければ、酒粕が入っているとはわからない。
抹茶(¥150)・・武重一族の女性陣が点ててくれるお抹茶とお菓子で一服。
手打ち蕎麦(¥800)・・お酒を作る仕込み水を使った手打ち蕎麦。地元有志の人たちがフル回転で打つ傍らでいただくお蕎麦は、幅5mm程の野太く、香りも強いガツン系。田舎蕎麦らしい風合いを楽しみました。11時半には蕎麦待ちの列が出来ていました。
十二六、純米、吟醸、大吟醸と飲み比べ、蕎麦で一息ついたら、十二六で作った米焼酎、これに梨を漬け込んだ地梨酒、甘酒と飲み進め、最後は、お庭を眺めながらお抹茶とお菓子をいただいて、12時40分発のバスに飛び乗って帰ってきました。滞在時間は2時間半程でしたが、蔵の雰囲気と日本酒、それにどぶろくを堪能できました。楽しかったー。
武重家は江戸時代からの旧家で、明治元年、12代目の当主の時から酒作りを始めた蔵元。作るお酒は、それぞれの時代に評価を得たようで、たくさんの賞状が飾られていました。小さいながらも、地道に美味しい日本酒を造っている蔵、探せばあるんですね。当主はもとより小さなお嬢さんまで一族総出で訪れた人をもてなす姿、蔵の周りの空気と雰囲気の影響も相まって、すっかりここのお酒が好きになりました。
来年は酒蔵開放10周年を迎えるそうで、帰り際に「10周年期待しているよ」と、皆さん口々に蔵の方に声をかけてみえました。ここの蔵ならいつの年でも来た人を喜ばせることを色々と考えてくれそう。春分の日はどぶろくを飲む・・我が家でも恒例行事になるかな?