ジビエのシーズン、東京のフレンチで、どこへ行こう
少し前になりますが、東京でジビエを満喫した時のお話を。さて、どうましょうと考えた時、真っ先に頭に浮かんだのが、恵比寿の「レストランヒロミチ」です。以前、赤坂の「
シュマン」で食べた小玉弘道シェフの料理がとても印象的で、オーナーシェフとして独立されたお店には、1度はお訪ねしたいと思っていました。
店は、恵比寿駅東口より「恵比寿スカイウォーク」を抜けたすぐ先のビルにあります。予約時間に店を訪ねると、奥の席に案内されました。まずは、食前酒をいただき、お店の方からメニューの説明を伺います。この日は、普段なかなか入手できない「茨城産のヤマドリ」がご用意できるとのこと。おぉ。素晴らしい。メインはこれで決まり。あとは前菜をどうするか。しばし、メニューと睨めっこ。コースもありますが、アラカルトでいただくことにしました。
*食前酒:クレムドカシス x2
*Amuse gueule:グリーンオリーブとハイビスカスの花のマリネ
*Amuse:グジェール、キャロットラペ リエット
*ブータンノワールのカリカリポテト包み、バニュルスキャラメルとリンゴのピューレ
*豚かしら肉、豚足、フォアグラのテリーヌをコロッケ仕立てにして
*本日のジビエより(茨木産の山鳥のサルミソース、内臓のタルタル)
*ワイン:Nuits Saint Georges 1er Cru les Murgers 2000
/ Alain Hudelot Noellat
*Fromage:コンテ、ミモレット、ブリードモー、モンドール、マンステール
*Dessert:ヴァローナアラグアニの熱々チョコレートケーキ x2
*食後酒:Banyuls 2009 / M.Chapoutie
Armagnac 1982 / Chateau du Frandat
*Petits Fours:バナナタルト、イチゴのフォンデュ、抹茶ゼリー
*エスプレッソ x2
●Amuse gueule
食前酒のお供に出されたのが、グリーンオリーブとハイビスカスの花のマリネです。ケッパーの風味と酸味が効いています。
●Amuse
料理のオーダーを終えた頃合に、お食事前の小さな前菜が運ばれてきました。グジェール、キャロットラペを添えたリエット。どちらも一口サイズ、パクっといただきます。
●Croquette de fromage de tâte
続いて前菜が登場。こちらは私がオーダーしたFromage de tâte。こちらのは、豚の頭、豚足、フォアグラで作ったテリーヌを角切りにして衣をつけ、芳ばしく揚げてあります。バルサミコソースでデコレーションした皿に盛り、レモンのコンフィ、シブレット入りのクリームチーズ、ハーブのサラダを添えてあります。お上品かつお洒落さん。熱々のところを齧ると、カリっとした衣の中から、ゼラチン質のネットリ感とともに内臓の旨みが口いっぱいに広がります。豚好きを魅了。甘酸っぱいバルサミコソースと、香り良いレモンのコンフィを添えて食べるも良し、シブレットの香りのするクリームをつけて、さらにまったり感を足して、いただくも良し。
●Le BONBON de boudin noir et pommes de terre croustillantes,reduction de banyuls.
こちらは相棒のチョイス。boudin(ソーセージ) noir (黒)は、その名の通り、豚の新鮮な血を使った黒い腸詰めで、これにたっぷりのマッシュポテトを添えるのが定番。こちらのスペシャリテは、腸に詰めてソーセージにするのではなく、カリカリに焼き上げたポテトでまあるく包んだボンボン状に仕上げてあり、これをリンゴのピュレと共に、バニュルスを煮詰めたキャラメルソースでデコレーションした皿に盛付けた、洗練された1皿になって供されます。パリパリのジャガイモの衣の香ばしさと軽快な食感が、滑らかで上品なブータンノワールの鉄分や土っぽいニュアンスを引き立てて、実に美味しかったご様子。ソースは、バニュルスの甘いソースと酸味のあるリンゴのピュレという王道の組合せ。
●本日のジビエ「茨城産ヤマドリ」 ~ 2名様より
メインのヤマドリは、2種類のお料理で供されました。1皿目は、腿肉、ささみのローストがサルミソース仕立てになっていて、サツマイモのピュレと芽キャベツのコンフィが添えてあります。ヤマドリはキジ科の野鳥。身が締まっていて、淡白で軽やかな味わいの中に、滋味溢れる旨みがあります。お皿から立ち上るこの上品な香気は、たまらないものがあります。美しい照りと輝きのサルミソースは、ヤマドリの血と内臓の旨味が凝縮された深い味わい。ソースを絡めてお肉を噛み締める毎に山の香気が広がる感じ。
2皿目は、それはもうワンダフルな1皿。目の前にお皿が置かれた瞬間、その芳しい香りに思わず、ニッコリ。一口大にカットしてこんがりと焼いた内臓部分が、ハーブ野菜と共にヴィネガーソースで和えたタルタル仕立てになっています。その脇には、脳ミソのつまった頭がコロン。もう素敵過ぎます。適度な歯応えのある砂肝、噛み締めるほどにコクのあるハツ、ネットリした旨みの肝、どれも深い香りと旨みに溢れ、ワインとの相性も文句なし。
●Nuits Saint Georges 1er Cru les Murgers 2000
/ Domaine: Alain Hudelot Noellat
ワインは、ヤマドリに合わせて、ブルゴーニュ北部のものから選びました。色合いは、透明感のあるレンガ色がかったガーネット。香りは、カシスなどの赤い果実系に、枯葉、紅茶などが合わさった、熟成感のある優しい香り。味わいにも、枯れたニュアンスがあり、タンニンはこなれていて、心地良い酸味と赤い果実の旨みのバランスが取れたエレガントな味わい。ワインの円熟味が、ヤマドリの味わいに、より一層、深みや風味を与えてくれます。
●Fromage
グラスに1杯残しておいたワインとともに、チーズタイム。プラトーの中から、お互いが気になるものを少しずついただくことに。私は、コンテ18ヶ月、ミモレット24ヶ月、モンドールを。相棒はミモレット24ヶ月、ブリードモー、マンステールをチョイス。ワインとの相性を狙ったウォッシュや白カビは、冷蔵庫から出したてという感じで、本来の風味や滑らかさが楽しめなかったのがちょっと残念。コンテとミモレットは熟成状態が素晴らしく、特にコンテのナッツ香りとワインの相性が意外に良かったのが印象的。
●Dessert
デセールは、店のお薦めに従って、2人ともチョコレートケーキを注文。ヴァローナのチョコレート(アラグアニ産カカオ72%)を使った熱々のケーキに、マダガスカル産のヴァニラを使ったアイスクリーム、ナッツが入ったパリパリっと香ばしいチョコレートクランチ、金柑のコンフィチュール、フレッシュオレンジが彩を添えています。甘酸苦、温冷、食感のコントラストが楽しい構成。
●食後酒
こちらのデセールが出来るまでの間のお楽しみとして、食後酒を。「やはり、お飲みになりますね。そんな気がしました。」スタッフの方が笑みをたたえて、テーブルの上に並べて下さったのは、マール、ブランデー、カルヴァドス、ソーテルヌ等々のボトル。眺めているだけで幸せな気分。私は、Armagnac 1982(Chateau du Frandat)を、相棒は、Banyuls 2009( M.Chapoutie)をいただくことに。Armagnacの香りには、癒されますねぇ。チョコレートケーキとの相性は、Banyuls との方が良かったかな。ショコラ好きの相棒もご満悦。
食後のエスプレッソと共にテーブルの中央には、Petits Foursが。この日は、バナナタルト、イチゴのホワイトチョコレートフォンデュ、抹茶ゼリーでした。小さなお菓子も、手抜きがなく、ちゃんと美味しい。
久々に小玉シェフのお料理をいただきましたが、何が良かったって、ヤマドリが良かったですね。山の香りを生かしたあのお料理は、しっかり舌と脳に記憶されました。いただいた料理は、どれも洗練されていて、ポーションも適量。料理が出てくる間合い程良く、食前酒から始まって、チーズ、食後酒まで、余力を残しながら、ゆったりと気持良く楽しむことができました。欲を言うならば、食前酒の選択肢がもう少しあったらよかったかな。サービスも、相手が初めての客であっても、希望を的確に掴んでくれる、プロの接客で、コミュニケーションもスムーズ。程好い距離感を保って接してくれるので、ストレスを感じることなく、快適に過ごすことができました。実に幸せな3時間でした。ご馳走さまでした。
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●レストランヒロミチ(フレンチ)
住 所:目黒区三田1-12-24 MT3ビル1F
電 話:03-5768-0722
最寄駅:JR「恵比寿」駅東口より「恵比寿スカイウォーク」を抜けてすぐ。
備 考:要予約 クレジットカードの使用可
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