2月13日(土) 旅の3日目
岩木山は、冬は雪雲に隠されて、その秀峰を仰ぐことが難しいと聞いていたのですが、嶽温泉から弘前に戻る途中、車窓からその美しい姿を拝むことができました。
●岩木山
津軽富士とも称される岩木山は、津軽の象徴です。
津軽出身の太宰治は、小説『津軽』の中で岩木山についてこのように描写しています。
「決して高い山ではないが、けれども、なかなか、
透きとおるくらいに嬋娟たる美人ではある」
●旧制弘前高校(弘前大学)
太宰が学んだ旧制弘前高等学校の跡地は、現在、弘前大学となっています。
正門を入ってすぐ右手奥に、旧制弘前高校の在校生名簿記念碑が立っています。
第7期(昭和2年)入学者の中に、津島修治(太宰治)の名前がありました。
人文学部の中庭には、旧制高等学校時代の井戸が残っています。太宰も使ったかもしれない井戸は、現在は使用禁止。太宰ゆかりの場所として、保存されています。
●旧制弘前高校 外国人教師館
大学の敷地の北側には、旧制弘前高等学校に招いた外国人教師の宿舎があります。
外観が、少しアンバランスなのは、左右対称に2棟並んで建っていたうちの左側だけが残されているから。
太宰は、旧制高校時代、ここに住んでいた英語教師をしばしば訪ねていたといわれています
外国人教師館のすぐそばに、太宰治の文学碑もありました。
弘前大学のキャンパスには、太宰の旧制高校時代のゆかりの建物や石碑などがいくつもあり、30分近くかけて、散策を楽しむことができました。旧制高等学校は、全寮制だったそうなのですが、太宰は寮には入らず、親戚の家に下宿していました。優雅な身分ですね。その親戚の家に向う途中に、立派な洋館があります。
●偕行舎
偕行社は、将校さんの社交場として建てられた、親睦厚生施設。
建築は、もう何度も名前を聞いている、明治の名匠・堀江佐吉です。この方、太宰の生家「斜陽館」も設計。青森銀行記念館をはじめ、弘前の名だたる洋館を建築した人に私邸の設計させるなんて、太宰の生家・津島家が相当の資産家だったことがわかります。
●太宰治まなびの家・旧藤田家住宅
偕行舎から程近い住宅街に、大正時代の面影を残す旧藤田家の住宅があります。太宰は、遠縁にあたる藤田家のこの家で、旧制高校在学中の3年間を過ごしました。
1階の座敷には、当時の太宰の派手な遊びっぷりを綴った、藤田家の長男本太郎氏の手記が紹介してあります。
急な階段を上がった2階奥に太宰の居室だった6畳間があり、その隣に当時中学生だった件の本太郎少年の部屋があります。カメラが趣味だったという本太郎少年が太宰をモデルに撮影した連続写真から、机や茶箪笥が当時のままに保たれていること、太宰のお茶目でひょうきんだった少年時代の様子がわかります。太宰の金遣いの派手さに驚いた本太郎少年ですが、昭和初期で子供がカメラをおもちゃがわりに使うなんて、負け劣らじの相当なお坊ちゃま。太宰は、名家に生まれ、裕福だったことへのコンプレックスに悩んだと言われています。悩みの深さへの理解には、及ばない部分がありますが、ここに来て、津島家も遠縁の藤田家も、いかに破格に裕福だったかだけ、それだけは、実感できました。
バス通りに出て、町の中心部に移動。弘前にて太宰ゆかりの地をあと1箇所訪ねます。
●土手の珈琲屋 万茶ン
弘前のメインストリートの土手町のすぐ南に「かくみ小路」という風情ある通りがあります。
太宰治が旧制高校時代に通ったという喫茶店「万茶ン」がこの通り沿いにあります。
店内は、カウンター席数席とテーブル席数席の落ち着いた雰囲気で、壁には、太宰の写真や、「岩木山」の写真が飾ってあります。太宰が通った当時の珈琲を再現したという「太宰ブレンド」と焼きリンゴのアイスクリーム添えをセットでいただくことにしました。
すっきりとした苦味が余韻で残る珈琲もよし、酸の旨みが凝縮した焼きりんごを冷たいアイスクリームを添えていただくもよし。時間に余裕があれば、是非カウンター席に座って、マスターとお話したい。津軽の人は、どこから見た岩木山が美しいか、皆さん一家言あるようで、そんなお話を楽しく伺うことができました。ちなみに、マスターのお勧めは「五所川原から見た岩木山」だそうです。
翌日は、五所川原から太宰の生家のある金木町を訪ねる予定だったので、楽しみがまた1つ増えました。でも、現地での「予定」を考えると、晴天に恵まれて欲しいような、天気が荒れて欲しいような・・・フクザツな心境であったことも、付け加えておきましょう。
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●旧制弘前高等学校(弘前大学)
住 所:弘前市文京町1
備 考:旧制高等学校名簿碑、太宰治ゆかりの井戸、太宰治文学碑、外国人教師館*""*""*"""*"""*"""*"""*"""*"""*"""*"""*"""*"""*"""*"""*"""*""*""*"""*"""*"""*
●太宰治 まなびの家(旧藤田家住宅)
住 所:弘前市御幸町9-1
備 考:偕行社の近
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●土手の珈琲屋 万茶ン (喫茶店)
住 所:弘前市土手町36-6 かくみ小路
電 話:0172-35-4663
備 考:弘南バス「下土手町」or「みちのく銀行前」下車
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